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「/rainbow」


  


「/rainbow!」
唱えれば、大気中の水分が、きらめくような音を立てて目の前へと集結する。
どこからともなく発せられた光線が、その目に見えない無数の水の球の中に差し込むと、それは瞬時に屈折と反射、再度の屈折を経て、勢い良く粒の外へと飛び出した。
屈折率の違いで分化し、鮮やかな色を帯びたその光は、2人の前で可愛らしく弧を描き、小さな虹の橋を架ける。
虹の周囲で、水分にただ反射して戻ってきた光がきらきらと瞬く。
両端には集まりすぎた水の粒が寄り合うように凝固して、小さな雲をほわりと形作っていた。
「わあ・・・綺麗だね、すごく」
キャスケット帽を片手で上げて、できたばかりの虹を見ながら、大きなジュラファントは興奮したように呟いた。
「こんなにはっきり虹が見えるなんて!」
その前で精一杯上を向いて虹を眺めていたムシクイも、目を丸くしながらコクコクと頷く。
普段見ルノト全然違ウ、マルデ雲カラ虹ガ生エテルミタイダ!
「うんうん、雲から上にだけ虹ができるなんて不思議だよ!
雲で下の虹が遮られているのかな、それとも雲から下には細かな水の粒があまりないのかな・・・。
本当に触れそうなくらいに鮮やかで・・・霧に光が当っても、ここまで鮮やかにはならないよね」
言いながら、クリームパフは虹に向かって白い牙にも似た手を伸ばす。
触れるかと思ったその瞬間、指先は涼やかな感触を残して、水と光の集合体を突き抜けた。
残念そうに手を戻すと、振り向いたシューが、触レナイニ決マッテルダロ、とにやりと笑う。
「うん・・・わかってるんだけど、実際見ると触れるんじゃないかって錯覚しちゃって」
そう言って、クリームパフは口元に苦笑を浮かべた。
秋の初めの敬老の日。
濃さを増した秋の霧が、赤い実を熟させた林檎の木と共に、2人を優しく包み込む。
落ちた実と同じくらい赤いムシクイ、ジャッキーシューはトントン、と足を踏み鳴らす。
コレ、博士ノトコロデ覚テキタノカ?
「そうだよ。敬老の日をお祝いしに行ったら、お礼にって知恵の壷が置いてあったんだ」
新技は久々だよね、と、クリームパフは嬉しそうに言って、短い尻尾を一振りした。
レベルによって覚える技を全て習得しているクリームパフにとって、新たな技を覚える術は知恵の壷より他にない。
それは技を覚えることのできない、見ているばかりのシューも同じこと。
新しい虹の壷の出現は、待ち侘びたものと言っても過言ではない。
「あっ」
クリームパフが声を上げた。
待ち望んでいた美しい虹が、その鮮やかさを薄れさせていく。
呪文の力でその場に留まっていた水分は、呪文が効力を失うに従って拡散する。
まず雲から発生した虹は、全体の色を、きらめきを緩やかに失っていき、とうとう周囲の景色に溶け込んで、光線と共に完全にそこから消え去った。
名残惜しく見送って、ジャッキーシューはため息をつく。
セッカクノ虹ナンダカラ、ズット消エナカッタライイノニ!
そっと右手でその頭に触れて、クリームパフは微笑んだ。
「だけど虹は消えるからこそ美しいんだよ、シュー」
シューは頬を心なしか膨らませ、虹の消えた宙を睨むように見つめる。
しばらく見つめていたかと思うと、くるりと体を反転させ、後ろに座っているパフを見上げた。
ナア、モウ一回!
笑顔と共に手招きをされ、シューはパフの頭の上に乗っかった。
ここなら良く見える。顔を思いっきり上げなくてすむ。
クリームパフは息を吸う。
明るい声で呪文が放たれ、再び秋霧のたなびく島に、きらめく虹が浮かび上がった。

 

 


 

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