TREASURE HUNT


first day / second day / third day / fourth day / fifth day / sixth day / seventh day

Text


  


<first day>


断絶されていた回路が繋がる感覚。
空虚だった自らの中に温かな飼い主の気配を感じて、クリームパフは元々開いていたはずの目を『開いた』。
朧な世界が焦点を結ぶ。
肌を包みこむ空気の存在を、四足で踏みしめる地面の存在を、住み慣れた自分の島の存在を認識する。
瞬きを、ひとつ。
足元からこちらを見上げるムシクイが視界に入り、その顔がにやりと笑ったのに気がついた瞬間、組み立てていた意識の最後のピースが、ぱちりと音を立てて埋められた。
「・・・っ、メンテナンス終了!?終了だよね!?」
飛び跳ねるように小さく叫び、ミルクティ色のジュラファント、クリームパフは焦って周囲を見回す。
そしてムシクイの返事を待たずに早口で呪文を唱える。
「/key! 行ってくるね、シュー!」
呼び声に答えて島の中央に現れた金色に光る鍵に触れ、クリームパフは慌しく自分の島から姿を消した。
ムシクイのジャッキーシューのにやにや笑いを残して。


G.L.L城で今日から『宝探し』が行われる。
その告知が秋霧のたなびく島の上空に浮かぶテレビに映し出されたのは、数日前のことだった。
迷路のような城内で、毎日場所を変え中身を替えて、ハズレ2箱を含んだ宝箱が設置される。
『謎の宝箱出現!!』の煽り文句に魅了された。
謎。場所も中身も分からない箱。見つけ出すのはきっと簡単だけれど、その過程は恐らくとても楽しいものになる。
そう考えるとわくわくしてたまらなかった。
そして、指折り数えてその日を待ち、こうしてメンテナンスの終了を待って飛び出してきた、というわけだ。
アジトでいつもの食事を口内に放り込む。
恐らく今計ったら早食い新記録が出るだろう。きっとシューにも劣らない。
無理矢理飲み込み、パフは今度は直接G.L.L中央広場に飛ぶ。
迷わず地図の前に行き、G.L.L城の絵に触れた。
メンテナンス直後だということもあるのだろうが、今日は普段の数倍のリヴリー達とすれ違う。
皆イベントを楽しみに来ているのだろう、次々に城の方角へと飛んでいく。
クリームパフも移動した先の城門をくぐり、城へと向かった。そのまま玄関ホールへ。
深呼吸して気持ちを落ち着けるような冷静さなど、普段はともかく、今のパフは微塵も持ち合わせていない。
気合を入れて、止まらない心のわくわく感が命じるままに、扉を開けて内部へ一歩踏み込んだ。
・・・途端、勢いでぶつかりそうになった『物』を見て、パフは些か唖然とする。
それは大きな宝箱。深い色合いの木目を、やや落ち着いた金色の金属で補強している。
側面には取っ手なのであろうリングと、紫色で描かれたG.L.Lの紋章。
更に取っ手のついた蓋の正面には『LIVLY ISLAND G.L.L CASTLE 000156800x』と、同じ紫で印刷されている。
(・・・入ってすぐ、これか・・・)
パフは反応に困ったように宝箱を見下ろす。とりあえず開けてみることにする。
頑丈な南京錠がかけられていたが、別に鍵がかかっているわけではないようで、手をかけるとするりと外れた。
上の取っ手を掴んで引き上げてみると、抵抗どころか自ら跳ね上がるようにして蓋が持ち上がる。
そして中には色褪せた紙が一枚。中央にでかでかと『ハズレ』の文字。
残念に思うよりも少しほっとして、パフは手を離す。
流石にこれでアタリだったら宝探しの意味も何もない。
恐らくこの宝箱は、今回の宝探しで探すべき宝箱の見本であり、同時に趣旨を簡潔に説明するためのものだろう。
でなければこんな、入ってすぐの場所になどまず置かない。
パフは考える。
となると、直前まで考えていた『1階層に1つの宝箱』という考えも怪しい。
今日はまだイベント1日目、軽い手慣らし程度の配置になっているのかもしれない。
アタリの宝箱があるならば、特に入り組んでいて広い3階やそれぞれの塔、地下の部屋は避けるはず。
むしろ1階の奥、あるとしても2階。
数字の意味も単位らしいxの意味もわからないけれど、場所や発見者の数を表しているのではないらしい。
それだけをクリームパフは確認して、適当に突き当りが近い右の扉を選んで捜索を開始する。
ヒントはほとんどない。となれば虱潰しに探すしかない。
時間はまだたっぷりあるし、二度手間になるのは嫌だからと、一応地下室も覗いてみたが見つからない。
最初に進んだ方向の真逆の位置にまで来て、ようやくクリームパフは宝箱を発見した。
外見は全く同じ。書かれた文字や数値までが変わらない。
まさか本当に1階にあるなんて、と、クリームパフは息を吐く。
これがアタリだろうという妙な確信があった。
先程と同じように南京錠を外し、宝箱の蓋を上方へと引く。
半ば飛び出すようにして姿を現したのは紙ではなかった。
紙の束だった。
柔らかで落ち着いた赤茶色の表紙に金で文字と装飾が施された、とても厚くてとても大きな、本。
最大サイズのジュラファントに、読書好きのクリームパフにぴったりのサイズの本。
『難しい本』。
両腕をアタリの宝箱へと伸ばし、宝物を持ち上げる。ずっしりとした重みに頬が綻ぶ。
念のため一通り城内を巡り、最後の宝箱が2階にあることと他に宝箱がないことを確認してから、パフは自分の島へ戻った。
「ただいま」
留守番をしてくれていたシューに声をかける。
パフに気付いたシューが目を輝かせてこちらへやって来るのを見計らって、持ってきた本をそっと置いた。
いかにも金銀財宝とは程遠い『お宝』を目の当たりにして、シューはツリ目を丸くする。
不満もあらわに、コンナノオ宝ジャナイヤイ、とでも言いたげにどんどんと足を踏み鳴らすムシクイを見て、パフは笑った。
笑われたシューの目が厳しくなって、慌ててクリームパフはなだめにかかる。
まだイベントは数日あるからシューの欲しいタイプのアイテムもあるよとかほらリヴタイにも色々書いてあるしとか。
言葉を重ねて、ようやく不満を期待に変えることに成功して、パフは密かに安堵の息をつく。
新しく広げたリヴタイに顔を近づけて、興味津々にイベントの項目を読んでいるシューの傍からそっと離れた。
いつもの定位置、大きく枝を広げた木の隣に腹ばいになり、今日の戦利品である大きな本をその前に置く。
じっくりと、愛しむように表紙を眺めてから、クリームパフはそれをめくり、長い長い文章の最初の書き出しを読み始めた。

僕にとっては、この大きくて厚くて重くて凄く読みごたえのありそうな本が、何よりも心動かされる『宝物』なんだよ、シュー。

 

 


 

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